こんな夢を見た。
森の中の道。僕は母と手をつないで歩いている。
右側にいる母の手や腕は生前よりふっくらしていて弾力がある。
その感触はとてもしっかりと自分の手に伝わってきて過分なほど現実味を帯びていた。何か話していたはずだが、その声や内容は記憶に残っていない。
いい気持ちで歩いていたのだが、そのうちにこんなに感触を感じられながら母と歩いている事が不思議に思えてきてしまった。僕はこの状況に何かほころびがあるような気がしてきたのだ。立ち止まって母の背中から腰のあたりに耳を近づけてみるとかすかにシューッと空気が漏れるような音がしていた。
「空気が漏れている」
でもどこから漏れているのかすぐにはわからない。
そっと服をたくし上げて腰のすぐ上の辺りを見ると、丸い肌色の絆創膏が張ってある事に気づいた。それをはがすと小さな傷口のようなものが見えたので、僕はそこに口をつけて空気を送り込んだ。
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