小用を足したくなった。品のいい椅子やソファのある、広い部屋。床には落ち着いた色合いで、植物をあしらった模様の絨毯、、ヨーロッパの古いホテルのロビーのような風情だ。「便器」はその部屋の中にあった。壁や衝立はなく便器の後ろには6〜7歳位の少女、左側の椅子には90近いと思われる老婆が座っており、共に西洋人のような顔立ちをしている。僕が用を足しに来たことをわかっていながら、彼女らは普通に話しかけてくる。僕はかなり切羽詰っていたので、仕方なく二人の言葉に相槌を打ちながら、用を足すしか無かった。便器の両側には肘掛けが付いていて、椅子の座面が便座になっているような形だ。便座に座る形で用を足せばよかったと後悔したが、便器と彼女たちの位置関係上、その体勢では話しかけてくれている彼らに背中を向けることになるから、立って用を足したのは間違いではなかったと思うことにした。普通に立った姿勢では周りに飛沫が飛ぶかもしれないと、僕は不自然に体を前傾させ、出来るだけ便器との距離を縮めようとしている。ズボンから出した僕の性器は遮るものがなく丸見えなのだが、彼女らは全く意に介さず、親しげに話しかけてくるし、僕も小便をしながらそれに応えている。話に夢中になって大きく相槌を打ってしまったのか、うっかり尿の飛沫を椅子の肘掛けに散らしてしまった。それでもまだ尿は止まらない。「ああっ!すみません!飛ばしちゃって!」それでも二人はその言葉にかぶせるように僕に話しかけてくる。かといって僕が粗相をしたことはちゃんとわかってて、話の合間に 「ああ、とんじゃったね」と、あまりその事を気にしていない様子だ。ようやく用を足し終えて、椅子の肘掛けに飛び散った尿を拭き取る。よく見ると、何種類かの液体がこぼれたか、ぶちまけたような跡があり、それぞれ微妙に色が違っている。それらは、まるで掃除の行き届いていないレンジにこびりついた 、時間の経った食べ物の脂汁のように固まっている。ついでなのでそれも拭き取ろうとするが、しっかりとこびりついていてなかなか取れないから、僕は少し焦っているのだが、二人はずっと和やかな空気のまま。僕はとまどいつつも、ここの居心地の良さに安心し始めている。
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