ふらりと入った食堂でトイレを使わせてもらうことにした。廊下を歩くと左側はみな和室。どの部屋にも人がいて、障子が取り払われているのか、中が丸見えだ。前にもここに来たかもしれないと思いながらここかな、と入った部屋には病人の男がいて布団に寝ている。挨拶をして、両足で乗ることが出来るくらいの巨大な独楽に似た形の健康グッズに乗ってみる。最初は簡単そうに思えたが、乗ってみるとバランスを取るのが難しい。両手を横に広げ、ユラユラ動きながらも、かろうじてそれに乗っている。病人の男はそこに寝たまま親しげに話しかけてくる。下を見ると独楽は病人の布団の真上だ。男は平気な顔で「僕は日本人じゃないから、、」と言いながらも、流暢な日本語で僕に何かを話し続けた。その間、僕の頭の中では、彼の奥さんがテレビ番組に出て「できる事なら朝の四時まで食堂を営業したい」と言っている映像が流れている。
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