暗い雨が降る日、僕は川越から車を走らせ家に帰っていた。がっちりとした鉄の骨格をまとった橋を渡る頃には青白い街灯の光が並んでいた。しばらく走ってから、なぜかまた川の向こうに行きたくなり、気づいた時には川岸に近いところに立っていた。橋は無かった。びたびたと降る大粒の雨の音は密になり、言いようの無い音の塊となって僕を囲んでいる。目の前に流れている川は一つの街が隠れるくらいの幅になってしまっていた。普段よりずっと遠くに街の灯りがこうこうとしていて、橋を飲み込んでしまった黒い川を照らしていた。僕は飽きもせずにそれをぼんやり見ていたが「ここにいては危ない」と自分の中の声が言ったので車に引き返す事にした。
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