僕が子供の頃、父は大変怖かった。
僕がなにかやらかすと正座させられ口答えなどすると平手打ちが飛んできた。真正面に座りこちらを怖い顔で凝視している父を見ていると、時々不思議なことが起こった。父の姿が徐々に小さくなっていくのだ。目をつぶったり、脇に目をそらしたりすると父は元の大きさに戻っている。しかしそのまま見続けると再び彼は徐々に小さくなっていき、しまいには3,4センチほどの大きさになってしまう。この事は割と頻繁に起こっていたし、僕はまだ小さかったので不思議だと思いつつ誰にも話さなかった。ある時、ひとつの疑問が生じた。父が小さくなるということは周りの部屋も小さく見えるはずなのだ。父以外のもの、例えば部屋の広い範囲が見えているのだろうか?全体の視界はどうなっているのだろう?久しぶりに正座させられ睨まれた時にそのことを思い出して小さくなっていく父以外の見えるものに意識を向けてみた。小さい父の周りは彼の背景にあるもの以外はほとんど見えず、それ以外は暗く何もない空間だった。父はいつの間にか僕を正座させて叱ったり手を出すことをぱったりとやめた。その視野狭窄の出来事は父との間でしか起こったことはない。
<追記> この現象は、不思議の国のアリス症候群と思われる。
ウィキペディア「不思議の国のアリス症候群}
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E6%80%9D%E8%AD%B0%E3%81%AE%E5%9B%BD%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%B9%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4
2014年9月28日日曜日
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