「ピンポン」とチャイムが鳴り、寝起きで朦朧とした頭で「はい」と応える。
(映像:写真をコピーした紙を持つ手 )訪ねてきたのは高校時代の後輩だった。ミュージシャンをやっている僕の友人に会いたいと、直接本人に連絡したらしいのだが。彼が手に掲げているその紙には、コピー機に乱雑に置かれて出力されたと思しき数枚の写真。ぶれてたり、何かの部分のような写真はどれも謎めいていてそれが一体何なのかわからない。一枚はつげ義春調のタッチで描かれた、女の子の足から先が画面から左に切れたイラストだ。女の子の周りの背景は、荒いアミ点で波打ち際の砂浜の写真を加工したようなもので「ではさようなら」という 吹き出しがある。彼は友人に連絡してみたものの、面会を断られたのではないか。その紙の一番上に、手書きで小さく「これがすべてだ」と書いてあった。
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