2010年5月24日月曜日
木の上の男
僕がいつも通る架空の道。
真っすぐに延びた道があり、道沿いの片側には小さい店が並んでいる。
その向かいには杉か、松の様な真っすぐな木がほぼ等間隔に立っている。
その近くまで来たときに近所の人たちのうわさ話が聞こえてきた。
ー見た?ー
ー気持ち悪かったー
ーあれは見ない方がいいよー
道沿いの真っすぐな木の上に引っかかっている男の死体についての話だった。
気持ち悪い、というのはその表情なのか、損傷がひどいのだろうか、、。
そこで話されている話題はいかにその死体が気持ち悪いかという事に終始していた。
その道はいやでも通らなければならない道だ。木の上にやはり男は居た。
枝の上に折り曲がるように引っかかっていて、ズボンから出た裸足の足が目に飛び込んだ。通り過ぎる前に上を見上げれば顔も見られたはずだが、見ないことに決めて通り過ぎた。
その男は道沿いの一番端にある店の店員か客だったのだと誰かが話す声がした。
その後何度かその道を通ったが、相変わらず男は当然のようにそこに居た。
当たり前の風景になりかけた頃、ようやく男は木の下に降ろされ横たわる事が出来た。
たった一人の検死官がしゃがみ込んで調べていた。
その道沿いの店が並んでいるもう一方の端にはギャラリーがある事を知った。
妻とマリコと三人でそこに行ってみた。男の話はしなかった。
開口部から入る外光が眩しく思えるほど暗いそのスペースに作品と思われるものは無く、僕には只の廃墟のように見えた。
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