女性が、鎖かたびらのような衣装を身につけている。重量感があり、とても派手だ。今度は僕が身につける番らしい。
これを身にまとうには順番がある。まずはメッシュをすっぽり被り、次に黒いチューリップハットのようなものを誰かに被せられる。最後に重たい金属製のメッシュ。
周りにいる人は固唾を呑んで僕を見ている。
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女性が、鎖かたびらのような衣装を身につけている。重量感があり、とても派手だ。今度は僕が身につける番らしい。
これを身にまとうには順番がある。まずはメッシュをすっぽり被り、次に黒いチューリップハットのようなものを誰かに被せられる。最後に重たい金属製のメッシュ。
周りにいる人は固唾を呑んで僕を見ている。
夜中に時々目が覚める。腹が減ったので台所でビーフンを作ろうとするが、ものすごく眠くて、どこまで作ったのか忘れそうだ。大学の同級生のケンジが寝室からこっそりギターを持ち出している。
「弾くなよ、うるさいから」彼は聞こえないふりをしている。
外はまだ薄暗い。しばらく寝て目が覚めたら、新旧の藝大生が何十人も、勝手に家に上がり込んで飲んでいた。これでは妻も眠れないではないか。和やかなムードに水を差すことにした。
「お前ら、なんだよ。人のうちに勝手に上がり込んで。ふざけるな」
みんな神妙な顔をして固まっている。中には教授か、大先輩なのか、おじいちゃんみたいなのも居て、一人で飲んでいる。とりあえず微妙に会釈しておいた。こいつらはケンジが呼んだに違いない。
家には大学の同級生のマサミやヨシヒコも来ていた。
「みんなさ〜、歳とっても印象が変わらないのがうれしいよね」とヨシヒコはにこにこしている。マサミも嬉しそうだ。
しかし部屋にたむろしているのは面識のない奴らばかりで、子供連れも多い。僕と妻が寝ている部屋には大型テレビが二台も持ち込まれ、イヤホンをつけて何か観ている女の子もいる。彼らは自分の家から勝手に不要品を持ち込んでいた。大量のハンガーやらレコード。VHSのビデオ(名画系が多い)は棚ごと持ち込まれ、掃除機は一箇所に何台も置かれていた。元々物が多い僕の自宅は更に物だらけになった。
藝大の奴らは勝手に上がり込んでは悪いと、お礼のつもりで持ち込んでるのか、この機に乗じて不要品を処分したかったのか微妙なところだ。
ふと、ビーフンを作っている途中だったことを思い出した。
広い台所に、これまたいろんな食材が持ち込まれている。ビーフンはゴミ箱に捨てられていたが、炒めていた具材は、フライパンから出され、綺麗に並べられている。ケンジの娘が、
「すみません、私を車で送って下さい」とお願いしに来た。
(あれ?少し大きくなった?)ケンジは仕事に出かけたばかりで不在だ。
「後でね」
寝室の窓を開けたら、とても古そうな能舞台が目の前に現れた。今まで住んでいて気づかなかったが、家の隣は神社だったのだ。能舞台の下は池になっていて、なかなか良い景色だ。その気になれば、部屋の窓からすぐに池まで出られそうだ。
ケンジの娘がそろそろ送って欲しいと呼びに来た。もう高校生くらいになっている。今着ている部屋着ではまずいから、外に履いていけそうなパンツを探す。見つけたパンツはみな黒光りする汚れがあったり、油を含んだようなホコリになっていて、履いて出られそうなものが一つもない。とりあえず、マシなものを一つ選んで履いた。
玄関に行くと、娘が座って待っていた。
もう20歳も過ぎたような雰囲気で着ている服も大人っぽい。僕を待っている間に一旦外に出てきたと言う。タバコを吸いに行ったのかもしれない。娘と共に出かけようとするが僕の靴が見当たらない。玄関にあるのは見覚えのない靴ばかりで、勿論それは部屋にいる誰かのものだ。
「マサミさんが『徳永に』って靴を置いていきましたよ」と娘。
モカシンとまだ新しそうな、見たことのないジャングルモック。ジャングルモックは革製でロールパンのような色と艶の靴だ。少し大きめだが、とりあえず履くことが出来て喜んでいたら、左足を上げた途端、靴底の半分がボロリと取れた。
「だめじゃん」
僕はどこかの道を歩き回っている。複雑な道で自分のいる場所がわからなくなるから、iPhoneで地図アプリを拡大して見たりしながら歩いている。ここは佐世保の地形を極端にした様なアップダウンの多い土地だ。砂岩で出来た岩山の切り通し、この先に丁字路があって右に曲がる…などと、うっすらした記憶のようなものが現れては消える。そしてまた同じところに出てきてしまう。僕はどこに向かっているのか、どこへ行きたいのかがわかっていなかった。とにかく目の前のパノラマ的な風景の中を、地図アプリを頼りにあっちだ、こっちだ、と歩いているのだ。
知人から郵便が届いた。封を開け、中を見ようとしたら、バラバラと何枚もの紙がすべり落ちた。ショッキングピンクの文字で彼女のバンドのライブの概要がびっしりと書かれた紙。封筒の中には更に封筒が入っている。封を開けると、そこには生きたトカゲが入っていた。ここは学生達が大勢居る場所なので逃げられたら大変だ。しかし、トカゲはとてもおとなしくて、封筒の外に出ようとするような素振りも見せなかった。
封筒の中には、他にも見た事も無い古代生物のような羽虫や珍しい甲虫ばかりが入っていた。彼らをどうすれば死なせずに飼っていけるのだろうか。
知人からのプレゼントの小さい生き物たちは、その後もどんどん繁殖し増え続けていった。飼いきれない生き物はペットショップに持っていった方がいいなと思った。