アヒルくらいの大きさの鳥は動物のような毛が生えていた。
毛並みや色は茶トラの猫のそれに似ている。姿は鴨のようにも見えるが、首が少し長いからアヒルにも似ている。僕はこれから彼をシメないといけないのだ。手にはオノのようなものを持っている。彼をずっと可愛がっていたのだろうか、僕は後ろ向きの鳥を抱きしめ、体温と体毛の柔らかさを確かめるかのように頬を押し付ける。
「だめだ、僕には殺すことは出来ない」
体を離した途端、それでも彼を殺さなくてはならない使命感のようなものが沸き起こった。どこを狙えば楽に死なせることができるのかを考えた。そして手にしたオノを首の根元に振り下ろした。オノは思ったより軽く、当たったもののダメージを与えるには程遠かった。毛の柔らかさも手伝って、ちっとも力が伝わらないのだ。僕は焦って素早く二度、三度とオノを首に振り下ろした。すこしでも苦しむ時間を短くしたかったのだ。
鳥は始終、僕に背を向けていてこちらを向くことは無かった。
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