世の中がすっかり軍国主義のような雰囲気になってしまった。1人の男が色の見え方について上官の気に入らないことを言ってしまったようだ。その結果、その場で、男は片方の目を刀で切られるという事になってしまった。目を切る任務を与えられたものは、切られるものへの礼儀として、目を背けず、切り口をしっかりと見なければならない。そんな酷いことをする役目が僕にも回ってきそうな気配だったが、そんな事は僕には到底できることではない…。仕方がない、僕は、動かないように男を後から抑えている役をやることになってしまった。手元にあった、何かの広告が印刷された紙を男の顔に当て、彼が寄りかかっている、人の背ほどの高さの丸太ごと、後頭部まで回しこんだ。「ヤーッ!」と刀を振る偉ぶった感じの軍国男。刀が当たったようだ。僕は目をつぶったままだ。「これで終わりか…」と思ったが、どうやら軍国男の刀さばきはかなり未熟で、一度では上手くいかなかったのか、 その後も二度、三度と切りつけるのだった。切り口は当然、酷い事になっているはずだ。軍国男が「すまん!…見れない!」と謝るのが聞こえた。下手くそな刀で何度も切られ、その切り口を見ることも拒否されてしまった哀れな男は、絶望の声で「(僕を)退学にしてくださいっ!」と叫んだ。僕はこの光景を見ないようにして、その場からそっと立ち去った。
2017年8月26日土曜日
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