ビル街の中にそそり立つ、鉄塔に登る。明るい黄緑がかったグレーの塗料はところどころサビが出て味がある。これは移動のための塔なので鉄塔のようなはしごと言えばいいのだろうか。
ビル街を下に見下ろすほど僕は高く登っていく。少し遠くに見えるビルを見て、この上まで登ったら向こうに最短で行けると考える。だからもう少し頑張ることにした。それまで登りやすかった足場の間隔が一箇所だけ何倍も高くなっている。ここを突破するにはかなり膝を高く上げて登らなければならない。
横風が強くなってきた。この一段だけ登ればビルの向こうに行ける。膝を何度も曲げながら頭の中で足場に足を掛けるイメージを浮かべるが、相当気合を入れないと不可能だ。突然ものすごい恐怖心が沸き起こってきた。ここまで登って来た事をあっさりと諦める気持ちにさせるほどの恐怖心だった。
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