でこぼこで雑草だらけの場所。軍服を着たロシア人の女が僕の目の前に現れた。睨みつけるように僕の目を見ながらハミングで何か歌っている。僕は足で地面を打ち鳴らし、その歌に伴奏のようなリズムを加えた。
視界の端に領事館のような建物が見えて、その前を職員らしき白人男性が歩いている。
(ここはもしかしたら共産圏?こんなところに居て大丈夫なのか?)
「タタッ・タタッ・タタッタタッタタン」
女は僕が足で地面を打ち鳴らすリズムにぴったり合わせ、僕を睨んだまま肩を前後に揺すりながら後ずさりしていく。休符のところでぴたりと動きを止めてくれるので、気持ちが良い。
僕が追い詰めるようにして奥のプレハブ小屋に入った時、この展開なら狭いこの部屋の壁に張り付いた彼女にキスでもすることになるのだろうと、期待のような想像をしていたが、唐突に何かの現実的な邪魔が入って「ごっこ遊び」はお開きとなった。
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